昔読んだ本を読み返す
休日の午後、なんとなく本棚を整理していたら、ずいぶん前に読んだ小説が出てきた。背表紙が日に焼けていて、付箋の跡が薄く残っている。当時の自分が何に線を引いたのか、まったく覚えていない。
ためしに最初のページを開いてみたら、思っていたよりずっと別の物語だった。同じ文章なのに、印象がまるで違う。十年前の自分が大事だと感じた一節は、今読むとあっさり通り過ぎてしまう。代わりに、当時は素通りしたはずの脇役の台詞が、妙に胸に残った。
本は変わらないが、読む側は変わっていく。それは当たり前のことだが、こうして物理的な手がかり——付箋や折り目——を通して確かめると、自分の変化を少しだけ客観視できる気がする。
結局、その日は他の用事を放り出して、夕方まで読みふけってしまった。新しい本を買うのも楽しいが、こうして昔の自分と対話する時間も、悪くないと思った。