時の流れ


十年以上前、初任給で買った腕時計がある。当時の自分にとってはかなり奮発した買い物で、しばらくは寝るとき以外ずっと身につけていた。

数年前から少しずつ調子が悪くなり、ついに先週、完全にとまった。長針も短針も、いつかの夕方の時刻を指したまま動かない。電池交換ではどうにもならないらしい。修理に出すか迷っているうちに、そのまま机の引き出しに入れたままになっている。

不思議なことに、止まった時計を眺めていると、その時計と一緒に過ごした時間のほうがよく思い出される。最初の出張、長く続いた仕事、何度か変わった住まい。針はもう動かないが、刻まれてきた時間そのものは、こちらの記憶の中で確かに流れている。

新しい時計を買うべきか、それとも修理に出すか。どちらにせよ、この一本をどう手放すかは、もう少しゆっくり決めようと思う。