夕方の近所を歩く


夕方になると、特に予定がなくても外に出たくなる。コンビニに行くでもなく、運動のためでもなく、ただ近所をぐるりと歩く。スマートフォンはポケットに入れたまま、できるだけ取り出さない。

普段は車で通り過ぎてしまう道も、歩くと景色がまったく変わる。家と家のあいだの細い路地に小さな祠があったり、塀の上で猫が伸びをしていたり。何年も住んでいる町なのに、知らない場所がまだいくらでもある。

空の色が刻々と変わっていくのも、歩いているからこそ気づける。さっきまでオレンジ色だった雲が、十分後には紫がかった青に染まっている。鳥が群れで電線にとまり、また飛び立つ。風の匂いに、夕飯の出汁が混じる。

戻ってくる頃には、たいてい何か考えごとが少し整理されている。問題が解決するわけではないのだが、外側に出ていた気持ちが、すこしだけ自分の中に戻ってくる感じがする。歩くことの効能は、たぶんそういうところにある。